それは障害児ときょうだい児の愛の物語…か?

ここ数日何度も何度も「アナと雪の女王」を頭の中で反芻している。

この物語が「同性愛を肯定している!」と言われているという話をどこかで読んだ。まぁ確かにそう読めなくもない。最後の方でエルサがアナに

「私のために犠牲になってくれたの?」

と質問するくだりがあるのだがこれへのアナの返答が

「…I love you.」

なのである。

英語圏のloveは、日本語として使われるときのニュアンスよりもずっと広い意味で使われるので、これを兄弟愛と解釈しても何の問題もないのだが、逆に言えば同性愛として解釈することもできることになる。

ちなみにこの部分、字幕では「だってあなたの妹だもの…」というような訳がついていたと思う。直訳すると日本人には同性愛的なニュアンスしか感じられないと翻訳者も思ったのだろう。

さて、そんな解釈もできる「アナと雪の女王」だが、別の見方もできるように思われる。

それは、エルサの能力を「障害」ととらえると見えてくる。

制御できない超能力を持つということは、普通の人の中で普通に生きていくことが難しいという意味で、これは正に健常者の中での障害者と同じポジションとなる。そういう見方をすると、この物語は「自分の障害とどう向き合っていくか」を表すと共に「子供や兄弟の障害とどう向き合っていくか」という非常に重いテーマを持った作品のように感じられるから面白い。

脚本家の意図は分からないが、障害児を持った親がどう振る舞うべきなのか、障害児の兄弟はどうなのか、この物語はこの物語なりの解答を出してくれているように思う。これ以上はないほどのきれいごとにしか感じられないかもしれないが。

見る人によって全然別の解釈ができる「アナと雪の女王」是非見てみてください。できれば吹き替えと字幕の両方がおすすめです。

大きなゆきだるま~

映画「アナと雪の女王」の吹き替えを娘と見てきて、ついでにサントラも入手してと、なんだかズッポリはまっている状況である。

で、英語の歌詞でサントラを聴いていると、ところどころひっかかるところがある。日本語の歌詞が英語の歌詞と全然違う部分があるのである。

「アナと雪の女王」の翻訳者はずいぶん苦労されたと思われるし、結果としていい仕事をしているとは思うのだが、それでも文字数の関係で吹き替えでは恐らくかなりの逡巡を経て今の歌詞があてられているのではなかろうか。

それでも、だいぶ意味が変わってしまっている、というか結構大事なところが削れてしまっていると思える部分がいくつかある。

たとえば、「雪だるま作ろう」で、幼少期のアナは鍵穴に口をあけて「大きな雪だるま~」と日本語で歌っているのだが、この部分の英語の歌詞は「It doesn’t have to be a snowman」である。直訳すれば「雪だるまにならなくてもいいからさぁ」という意味だ。

アナはなぜこんなことを言っているのだろう。

日本語でアナはエルサに「雪だるま作ろう」と言っっているが、これも元の詩の直訳は「Do you want to build a snowman?」(あなたは雪だるまを作りたいと思わないの?)である。「作ろう」と言っているのではないのだ。「作ってよ」と言っているのである。

アナがエルサに事情も知らず無邪気にお願いして断られるこの構図は、氷の宮殿でアナがエルサにアレンデールを救ってほしいと頼む状況と同じである。氷にの宮殿に向かうアナもその願いがかなえられるという根拠は何も持っていなかったし、心のなかで「やっぱ無理かも」という気持ちがあったはずである。何度もわざわざ「大丈夫よ」と繰り返す様子を見てもそのことが窺える。

この「氷の宮殿での説得失敗」を、この最初の段階でさりげなく歌の中に織り交ぜて示唆しているのがこの「It doesn’t have to be a snowman」という歌詞なのではないかと思うだ。

この映画では、「愛と怖れ」が大きなテーマとなっていて、その対象関係がいろいろなところに投射されている。「アナとエルサ」「オラフとマシュマーロウ」「アレンデール宮殿と氷の宮殿」といった具合である。

つまりこの物語で「雪だるま」はアナとエルサの間の愛の象徴として登場しており、ストーリーの全編を通して大きな意味を持たされているのだ。

アナがエルサに雪だるまを要求するというのは、宮殿でエルサに「一緒に暮らそうよ」と呼びかけるのと同じことなのである。

雪だるまと言えば、エルサが「Let it go」を歌いながら残った片方の手袋を高く投げあげ、自分の解放を宣言した直後に無意識に作ったものがこの雪だるまだったことも非常に意味が深い。怖れから解放された魂から最初に出てきたものが愛の象徴だったのだから。

このあたりの描写をあまり口説くならないようにサラッと見せているところは本当に上手いなぁと思わされる。何度も鑑賞に堪えるというか、見るたびに発見があって飽きさせないし、様々な解釈ができるのである。名作というのはこういうものなのだなぁとつくづく思う。

早く日本版ブルーレイでないかなぁと。