不思議な出来事

もうだいぶ前になるのだが、夏になるとふと思い出す出来事がある。

墨田区の横川近辺で仕事をしていた頃のある暑い日のことである。

昼食をとるために外に出て、仕事場に戻る途中にある信号(横川小学校のあたり)を待っていた僕は、信号が青に変わったと思い横断歩道に踏み出したのだ。

ところが何故か信号は赤のままで、その時通過しようとしていた車が僕に気づき、クラクションを鳴らして止まってくれたおかげで僕は我に返り、事なきを得たのだった。

僕は割と自己分析が好きで、「あの時なぜ自分はそう思ったのだろう」と後で考えることが多いのだが、改めて同じ信号の前に立ち、あの時の状況など考えてみたりもしたのだが、どうしてもあの時「信号が青になった」と自分が判断した理由はわからず仕舞だった。

これだけならばただ「道端でぼーっとしてしまい車に迷惑をかけた自分に反省」だけなのであるが、この話には続きがある。

同じ交差点はその後も毎日通っていたのだが、10日ほどたったある日、いつものようにそこで信号待ちをしているときにふと左の方を見ると、花が飾られている!

これを見て一気に気温が10℃も下がった気がしたのだが、その花の場所は

あの時、車が止まってくれなかったら、きっと僕が横たわることになっていたであろう場所

だったのである。

この事故はその付近にお住いの方ならまだ記憶されているかもしれない。しばらくその場所には警視庁の看板があり、事故を目撃した人に連絡を要請していた。

僕はもちろん事故を見ていたわけではないのだが、それを見て改めてその交差点のその場所から周囲を見回し、五感を最大限に効かせて「ここに事故が起こるような要因があるのではないか」と当時の自分を振り返ったりしたのだが、やはり何度考えてもそこは見通しが悪いわけでもない、ただの信号がある平凡な交差点にしか見えなかった。

こんな話を誰かにしたところで相手にしてもらえないので黙っていたのだが、今日久しぶりに思い出したので書いてみた。

これが作り話なら車が止まった後に「死ねばよかったのに・・・」などという声がどこからともなく聞こえてきそうなものだが、生憎とそういうのもなかったのである。